253、オルバースのパラドックス

夜空が暗いのは当然だと、私たちは思っている。しかし、そのことに疑問をもち「宇宙には無数の星があるから、夜空は明るく見えるはずだ」と主張したのが、オルバースのパラドックスだった。

実際、宇宙は無限の広さをもち、数え切れない恒星が存在している。事実、超高性能望遠鏡ケプラーが撮した写真でも、夜空の暗い部分には多くの恒星や銀河が確認できる。遠い領域では、その分そこに含まれる恒星の数が増えるから、オルバースの主張するように、夜空は全面LEDのように光っていないと矛盾する。

このパラドックスに対して、宇宙に光をさえぎる雲があるからだとか、途中で曲がって地球には届かないからだといったさまざまな仮説が検討されてきたが、「地球に届いていない光がたくさんあるから」ということで解決した。

宇宙誕生が137億年前。137億光年の距離より遠くにあった光は、まだ届いていないのだ。それなら、一日毎に届く光が増えて、夜空は少しずつ明るくなっていくのだろうか?

いや、反対だ。ハッブルによる発見で宇宙は加速的に膨張していて、光が届かなくなっていることが分かっている。100兆年後の夜空からは星の光が消えてしまうのだ。太陽もあと60億年で燃え尽きて、その前に地球を飲み込んでしまうようだから、「地球」人には関係ないことであるが…

しかし、人類が何処かで文明を継続させることができていたら、夜空の星座を見て遠くの宇宙文明を想像したり、幼子の質問に答えたりすることもできなくなってしまう。これは、一大事だ。星座占いもできないし、私たちは星に生まれ変わることもできない。

さて、最近悲しいニュースが増えた。悩んだ末の決断だとは思う。夜空から星がなくなるのは100兆年後の話。急いで星にならなくてもよい。それより、今の苦しみを乗り越えて、私たちの希望の光になってほしかった。

オルバースよ。夜空が暗くなっていくのは、日毎に私たちの「内なる宇宙」に光が移動しているからではないだろうか。それなら「心の夜空」も、今日よりも明日の方が明るい。希望の光は、少しずつ増えていくものだ。

そのことに気づいてほしい。

待て!

(2020年9月28日@nortan)

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