237、特異点

特異点とはシンギラリティのことである。ブラックホールの中心における重力崩壊という「物理的」シンギラリティ(特異点)や、AIが人間の能力を越える「技術的」シンギラリティがよく知られているが「文化的」特異点もあるらしい。

文化的特異点とは「偶発的な出来事や新しいタイプの人物の行動や思想によって、その後の文化を一変させた事象」と定義されている。

例えば、火や言語の使用・文字や紙の発明・キリストや孔子の思想・ピタゴラスやガリレオの発見などが文化的特異点に当たる。もちろん、電気やコンピュータの発明も文化的特異点である。

つまり、過去を振り返ることで、あの時が特異点であったと気づくのだ。だから、特異点の瞬間を生きている者には、「今が特異点であるかなんて見当も付かない」にちがいない。このように考えると、現在のコロナ危機は特異点になりうるのだろうか? 今は判断できないはずであるから、想像してみることにした。

まず、特異点ではないとする。理由は、100年程前のスペイン風邪や中世ヨーロッパの黒死病など、過去にも同様にパンデミックを乗り越えてきていることが挙げられる。つまり、手洗いやマスクの習慣などのいわゆる新しい生活様式も、巨大隕石の衝突に比べれば「偶発的な出来事として文化を一変させる」ほどではないと考える。

次に、特異点であるとする。それでは、特異点たるには何が必要であるか。その条件になるのは「思想・発明・発見」であろう。

思想については、LGBT運動による性的文化問題やBLM運動による人種差別問題が着火材となって新思想が誕生し、文化を一変させる可能性がある。しかし、これは予想可能、かつ、現在進行中の変化とも考えられる。

発明については、SFの力を借りることにする。タイムマシン、瞬間移動、若返りや不死の薬などネタには尽きない。どれも文化を一変させること間違いないが、実現の可能性はゼロに近い。

残ったのは「発見」である。別世界や多次元宇宙の発見、火星の知的生命の発見や近くに移住可能な惑星の発見、人間の第六感(超能力)の発見など、これもSF的になってしまったが、期待されのは「ウィルスの病原性を押さえ込むワクチンのような物質」である。この発見が現実となれば、次のパンデミックも恐れる必要はなく、文化も一変するはずだ。

さて、未来の百科辞典に「現在が文化的特異点であった」と記述されるのであれば、「驚くべき発見」が原因となる可能性が高いと考える。そして、「その発見をする確率が約78億分の1で自分にもある」と想像すると、コロナ禍の閉塞感を打ち破って、明日への希望とともにワクワクと勇気も湧き出してはこないだろうか。

(2020年8月29日@nortan)

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