232、認知的経済

2個あるりんごが8個ふえていくつになりましたか? と問われた時、2+8をするより8+2をした方が、認知的にエコである。2+8は、既知の2から続けて「3、4、5、6、7、8、9、10」と8回数え上げなければならないけれど、8+2なら「9、10」と2回の数え上げですむ。私たちは無意識に、このようなエコ方略を選択し、脳の認知システムを節約しているのだという。2+8に関して最もエコなのは、記憶を検索して10と照合する「知っているシステム」である。しかし、記憶に自信がもてなくなると、例え2+8でも数え上げシステムに頼らざるを得なくなる。

さて、PCの記録を消去してしまい「知っているシステム」も使えず、後は地道に「数え上げシステム」という状況に陥ったとする。失われた情報が、1億2000万データと10万データの場合で計算してみた。便宜上、1秒で1データを数え上げるとする。

1億2000万秒÷(60秒×60分×24時間×365日)≒3.8年

10万秒÷(60秒×60分×24時間)≒1.2日

つまり、1億2000万データと10万データでは、4年分と1日分ということなった。ずっと数え続けることを考えたら、1日でも大変だ。

しかし、今は消去したPCのデータを復元する技術があるらしい。良かった。数え上げずにすむエコ技術だ。もし、このことで苦労している人がいるのなら朗報だが、何らかの事情で使いたくないかもしれない。それなら、記憶と照合して「認知していました」と正直になる方が、よほど認知的経済としてもエコだと思うが、どうだろうか。

(2020年6月23日@nortan)

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