193、忘れられる存在

水槽の8割を占めていたウィローモスを半分ほど取り除いた。水量が少し減ると、水中でモスにからまり溺れそうになっていた魚たちも、広くなった水域に喜んでいるようだ。循環ポンプのフィルターもきれいになり、濁りきっていた水の透明度も上がってきた。

20年程前に設置した60cmの水槽。ガラス表面の傷も増えてきたが、青と赤の鮮やかなネオンテトラを中心に、大型魚の餌になることを救われたヒメダカなど、その住民は入れ替わってきた。現住民である金魚のピンとパールは、朝夕に私の姿を見つけると、水面でパクパク口を鳴らして餌を求めてくる。

「よしよし」と思っていた時、砂に埋まりかけているガラス容器に気づいた。以前、水質が悪化した時に何処からともなく現れ、あっという間に水槽世界を占領してしまったプラナリアを除去するために沈めたトラップだった。プラナリアのせいで、折角救われたヒメダカも絶滅してしまったのだ。

そのプラナリアも、増えすぎる傾向にあるヒラマキガイに駆除されたのだろうか?水質が改善されて住みにくくなったのか、いつの間にか消えてしまっていた。

半年ぶりに水槽掃除をするまで、そのことを忘れてしまっていたのだ。

だんだん透明になっていく水を見つめていると、

「私たち人類が、この地球の住民であったことを忘れないでください…」

そんな小さな声が、遠い未来から聞こえてきたように思えた。

(2020年1月4日@nortan 案外、近い未来からだったかもしれない)

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