「青虫は何でできているの?」「たくさん食べた葉っぱでできているんだよ。」「青虫はどうやってチョウチョになるの?」「さなぎになって、空をとぶ夢を見ている間に、天使が葉っぱを背中につけてくれるんだよ。」
昆虫は4億年前、両生類より4000万年早く陸に上がった。蛹(さなぎ)を経て成虫となる種は、3億5000万年前に誕生していたと言われる。
この幼虫から成虫への完全変態、つまり蛹化(ようか)は神秘的だ。数回脱皮して巨大化した青虫が突然動かなくなったと思えば、しばらくして外皮の中が変色してむにゅむにゅっと動き出す。そして、割れた背中から皺くちゃのやわらかい成虫が出てきて、重力で羽を広げた後に見事な蝶となる。私たちホ乳類には真似のできない技、リアルポケモンである。
しかし、この蛹の中で起こっていることの仕組みは解明されていない。ただ、神経を除いた組織がドロドロになり、新しい組織を再構成しているということは分かっている。だから、蛹に振動を与え続けると成虫にならずに死んでしまうのだそうだ。
それにしても、あのシンプルな形の青虫のどこに、精密で美しい蝶のパーツの設計図が隠されているのだろうか。もし、人類も5000万年かけて進化すれば、そんな能力を身につけて羽ばたく生物に変態できるのだろうか。
「人間は、どうやったらチョウチョになれるの?」
これは難問だ。しばらく布団に包まって、頭の中を蛹化(ドロドロ)して蛹化んがえたら、気の利いた答えを思いつくかもしれないが、
とりあえず、
「たくさん人の役に立つことをしたら、最期に天使が背中に羽をつけてくれるんだよ。」と答えておこう。
(2019年10月23日@nortan)