西洋では社交辞令としてWhite lieが根付いているらしい。かつての日本には、この文化はなかった。子どもの頃に「嘘をつくと、閻魔大王に舌を抜かれる。」と教えられて育った日本人には、嘘はBlackのみでWhiteはなかったはずだ。強いて言えば、White lieは「嘘も方便」の方便に近いが、両者は同義なのだろうか。
方便とは仏教用語で、相手を悟りの道に教え導くための嘘である。仏典の原典によると、釈迦が我が子を亡くした女性に「死者を出したことのない家からカラシの種をもらってきたら、生きかえる薬を作ってやろう。」と方便を使う。女性はどの家にも生老病死があることを悟って、釈迦の弟子となったという逸話があるらしい。つまり、方便をつける者は悟りを開いた者(仏)だけになるし、つかれた者も悟りの道を歩む。やはり、方便は嘘とは違った。
さて、私たちがつけるのは方便ではなく、嘘の方だ。西洋文化を手本にし始めた明治維新から151年目。今の世の中にはさまざまな嘘があふれている。私たちは取り入れた文化を発展させることが得意なはずだ。ならば、BlackとWhiteの2色だけでなく、カラフルな色をつけても良いかもしれない。相手を思いやった嘘ならWhite、空気を読んだ嘘ならBlue、他愛もなくかわいい嘘ならYellow、恋人の気をひくための嘘ならPink、危険な嘘ならRedなど…そのうち嘘発見能力をもち、発言のたびに変色するAIバッチも開発され、胸につけることが流行するかもしれない。しかし、着用を義務づける法律が成立することはないだろうから安心してほしい。
(2019年10月23日@nortan)