153、アンドロイド観音

観音寺の境内でハトに餌をやって過ごしていた昔、観音様に「また、遊びに来たのか。私の使いであるハトたちに、しっかり餌をあげてくれ。」と語りかけてられるようだった。そこで、買ったハトの餌を紙袋から少しずつ出して地面にばらまくと、首を前後に振りながら器用に小石を避けて食べるハトもいれば、いつも見つけた直後に横取りされてしまうハトもいた。可哀想なので、要領のよいハトが離れている時にひょいと餌を投げてやっても、数回に1回ほどは走ってきたハトにつままれてしまった。一番効果的だったのは、一粒ずつやるのではなく、袋の中身を不器用なハトの近くに一度に蒔いてやることだった。おそらく、この様子を見ていた観音様は、夜お堂の屋根に戻ったハトたちに「仲良く分け合って食べなさい。」と説法をしたにちがいない。観音様は、正しくは観世音菩薩といい、お釈迦様のように悟りを開くため修行中の菩薩である。会社で例えると、如来が社長で、菩薩は副社長というところだ。

最近、ある寺社が大学との共同プロジェクトで、観音様のアンドロイドを誕生させたという。プロジェクトマッピングなどの映像技術を用いて般若心経の教えを説法するらしい。今後、国際化として外国語にも対応できるという。これは、社長の座を脅かす凄腕副社長の誕生だ。

さて、情報技術の発展で無くなる職業が増えることは予想されたが、僧侶のみならず観音様までとは驚かされる。次は、使いのハトたちもアンドロイドになるのかもしれない。そうすれば、餌の取り合いを心配することも無くなるだろう。同様に、人間も早くアンドロイドになれば、食糧資源の取り合いもなくなる…ひょっとして、これが究極のアンドロイド観音様の教えなのだろうか?人間という職業がなくならないよう、説法はこころざし高きお坊さんにお願いしたい。お経や説法が少しばかり不器用でも、人間味があってよい。ちょっと待て…菩薩も僧侶も職業だったろうか?そのうち、如来様もアンドロイドに?あな、おそろしや、南無阿弥陀仏。(2019年3月24日@nortan)

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