135、脱退

国際捕鯨委員会(IWC)から脱退のニュースが飛び込んできた。我が国にとっては、戦前の「国際連盟脱退やむなし」以来の異例。再び戦争を始めるかのようにも聞こえてしまうが、調査捕鯨で捕っていた南極海の鯨をあきらめて、排他的経済水域内での商業捕鯨再開するための決断らしい。その結果、「鯨の数は十分に回復した。捕鯨は文化であり、適数な捕鯨は認められる。」と世界を説得する機会を失い、「哺乳類で知性ある鯨を守るべきだ。」と考える世界を敵にまわしたことには違いない。ちなみに、牛も知性ある哺乳類ではあるが、これはIWCの管轄外である。

けれども、心配はいらない。TPP(環太平洋連携協定)からの脱退、UNESCO(国連教育科学文化機関)からの脱退、UNCHR(国連人権理事会)からの脱退、UPU(万国郵便連合)からの脱退、COP21(パリ協定)からの離脱、INF(中距離核戦力)全廃条約からの脱退など、ここ数年で我が国を遥かに上回る脱退を宣言している国があるではないか。

今、世界は「自国ファースト」という脱退ブームなのだ。隣国による国際条約反故もその流れに違いない。過去のあらゆる約束を無かったことにし、話し合いの場も軽視しよう。説得するなんて無駄だ。思い通りにならなければ「俺やめる」と我を通せばよい。妥協するなど格好悪い。とんどん軍備を拡大しよう。力を示して意見を通そう。世界の秩序は変わったのだ。国際連合の役割も、すでに終わっているのかもしれない。こんな時代の変化を、私たちがはっきりと認識できるのは、いつも、今が過去になってからだ。100年後、まだ人類が存続していればの話だが…。

さて、今晩はクリスマス。私たちは過去から学ばなければならない。サンタクロースには、大人たちへ「歴史の教科書」を届けてほしいと思う。実在していればの話だが…。(2018年12月24日@nortan)

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