123、ゆるキャラ

芸術や文化スポーツの分野での最高位は、フランス語で「グランプリ」である。1951年に黒澤明監督が「羅生門」で大賞をとったことがきっかけで、日本でも使われるようになった言葉だ。2010年からは、ゆるキャラまでがグランプリを競い合っている。2010年ひこにゃん(彦根)、2011年くまもん(熊本)…そして、遂に「ゆるキャラが不正」というニュースが飛び込んで来た。市職員にフリーメールでIDを取得させ、組織的に得票数を操作したらしい。外見だけでなく、モラルがゆるい「ゆるキャラ」だったのかと、思い出の街のマスコット(守り神)だっただけに悲しくなった。ゆるキャラの「中の人」は、汗だくになりながら必死に頑張ってきただろうに…

ゆるキャラはだれにでも愛されるデザインでなければならない。そのセンスの難しさでは「芸術」である。また、猛暑の中でも可動部分の少ない体形で動き続けなければならぬ厳しさでは「スポーツ」である。そして、名産品や歴史人物、地域の特徴を身に纏っている点では「文化」である。つまり、ゆるキャラの闘いは、アカデミー賞でもあり、オリンピックでもあり、世界文化遺産でもある。そう考えると、年1度のグランプリに執着する自治体の必死さも理解できるが、得票操作はいただけない。せめて、ぬいぐるみ購入で投票できる総選挙にするか、いっそのこと「ゆるキャラ47」を結成し、ジャンケンでセンターを争った方が気持ちよい。

さて、国民全体の奉仕者であるという使命を忘れた意識の「ゆるキャラ議員」には、「中の人」をやってもらうというのはどうだろうか。そうすれば、売名出世より滅私奉公。本当にだれからも愛されるキャラクター(代表としての顔)に生まれ変わるに違いない。(2018年11月12日@nortan)

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