116、ラングとエッジ

銀河危険情報で渡航禁止を知った上で、言語研究のために安全レベルD級惑星に旅立ったラング。この原始星の言語と文化を学べば、銀河中の文明に平和をもたらせると確信していた。宇宙船を洞窟に隠した後、この惑星の住民に見事に変装した。空腹に耐えられずにレストランにとびこんだ。その時、食事の様子が奇妙だったこと、口を開かずに喋ること、チップとして渡した硬貨が惑星にはない物質だったことで異星人と見ぬかれ、惑星安全局にとらえられた。毎日のように繰り返される尋問。おかげで、ラングは目的であるこの星の言語を深く理解することができた。帰れる希望はゼロに近づくばかりだったが、覚悟はできていた。遠く離れた故郷で同僚のエッジは、ラングの救出を申し出たが、世論からは「D級惑星に行くなんて、自己責任だ。」という批判も浴びた。連邦政府も表向きには沈黙を守ったが、政府内では「どんな理由であっても、必ず同胞を救出する。宇宙連邦は、たった一人をも見捨てない。」と密かに救出計画が練られた。解放されたラングは、30年後洞窟の宇宙船で帰路についた。途中のアンドロメダ第39惑星で同僚と再会を果たしたラングは、エッジを「I missed you!」と抱き寄せた。すると、エッジは「これが、あの惑星の言葉と文化なのかい?」と驚きながらも「約束してほしい。連邦政府が動いたことは秘密だぞ。」とラングの脳にテレパシーを送った。「コミュニケーションに音声を使っているなんて、遅れた文明だ。伝えたいことの半分も伝わらないじゃないか。」そう言うエッジに、ラングは「そうでもないさ。白黒つけないで『曖昧模糊』としておく方がよい事もあるよ。僕は、テレパシーでは伝えられない救出のお礼の代わりに、必ず研究を完成させる覚悟だ。」とテレパシーで答えた。無事に戻ったラングに世論は様々な反応を示したが、ラングはエッジと共に研究を続けて、ついに「平和のための音声コミュニケーション理論と技術」を完成させた。それから間もなく、地球の電波望遠鏡SETIでは宇宙連邦からのメッセージを受信した。(2018年10月27日@nortan「民は、国である」を哲学して)

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