106、ブレイクスルー

手首に埋め込んだl平方mmの極小チップに信号を送ることで、神経が脳にオオカミの映像を映し出すことができたという論文が始まりだった。この技術は、地震大国日本では「緊急地震速報」に活用され、一部の新物好きでマニアックに流行しだした。そして、地震で「チップのおかげで助かった。その後、サイレントにしてあったスマホの通知に気づいた。」というツイートが広がり、瞬く間に広まった。これが、始まりだ。

この技術は、迷子・認知症老人への道案内、ランニング時のバーチャル映像と社会的承認が得られるものへと広がっていった。今では、働き方改革の一環で労働時間が8時間越えになると「赤いバツ印」が表れるようになった。

その後、技術の発展により違法行為が行われそうになると、そのレベルに応じて警告ピクトグラムと文章を表示するようになった。その頃には、全国民に出産時の埋め込み義務も法律化され、学校教育でも「子どもの道徳観向上のための映像チップ活用」なんて実践も行われるようになっていた。

50年経ち、パソコンに画面が必要なくなり、学校でも「覚えるための学習」は必要なくなった。そして100年、学校も教師という職業もなくなり、公立知識配信機関と民間バーチャルスクールが学習プログラムを競いあうようになっていた。

当初から反対を表明する親や教師もいたが、それが伝わると目の前に「あなたは、人間の進歩を阻害しています」「考えを変えなさい」…「この警告を消したければ出頭しなさい」と警告が映し出されるようになった。警告をそのままに寿命を全うした者もいた。しかし、100年たった今、昔を知る者はいなくなった。映像チップを大切にすることが道徳規範(常識)とされ、そうでなかった昔の人間を「プレヒューマン」と揶揄する者も多くなった。…

キアヌ・リーブス主演「マトリックス」ではないが、こんなことが、急に頭に浮かんできた。そう言えば、子どもの頃から左手のひら数mmの筋がある。心配になって、目の前で右手を数回振ってみた。まあ、いいか!?未来予測なら、ハズレるものだ!現実なら、受け入れるしかない。(2018年8月16日@nortan右手を振るのがクセにならぬように)

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