NHKの中継に、修学旅行で長崎を訪れたことを思い出した。平和記念公園、そしてグラバー園から大浦天主堂横の雨に濡れた石畳を慎重に下った。その大浦天主堂は、開国後に建てられた日本最古の木造教会で、2016年に一般の教会堂より上位の小バシリカに指定されたという。2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界文化遺産にも登録された。平和記念公園の東に位置する浦上天主堂は訪れなかったが、調べると、大浦教会で信仰を告白したことで迫害された浦上の信徒が後に建立したもので、73年前に崩壊したことが分かった。第2の原爆ドームとも言える。倒壊を逃れた外壁等をそのまま保存する運動もあったが、市長の判断等によって再建されることになったという。原爆ドームが世界文化遺産に登録されたことを思えば、保存されていれば同様の道を辿れたと思う。違いのひとつは、広島は物産館であったのに対し、長崎は教会であったということだった。戦争の記憶は負の遺産と言われる。それを残す残さないには、さまざまな思いが入り混じる。しかし、遺跡があってもなくても、世界文化遺産に登録されてもされなくても、8月両日は忘れてはならない日である。NHKオンライン調査(2015年)によると、1945(昭和20)年8月6日を答えられたのが30%(全国)、8月9日を答えられたのが26%(全国)である。間違いなく、私たちの記憶は風化してきている。さて100年後、私たちの子孫は何%が答えられるだろうか。いや、年月日を正しく答えられるという『知識』よりも、一番伝えるべきなのは「原子爆弾による悲しみを二度と繰り返してはいけない」という『決意遺産』なのかもしれない。(2018年8月9月@nortan)