①「キリンの首は、どうして長くなったのか。」この発問は、間違っている。それは問いの中に「昔は短かったが」という暗黙の前提が含まれているからだ。そもそも、首の短いキリンが化石として発見されてはいない。また、キリンは水を飲む時、5mの高さから0mまで頭を上下させる。その時に目まいを起こさないように後頭部の毛細血管が発達しているそうだ。同様な形質がオカピーにも見られることから、首の短いキリンはオカピーだったと考えるのも間違いである。短い首から長い首に進化したのなら、その間に中くらいの長さの首のキリンが存在するはずだが、その証拠も発見されていない。キリンは、初めから首が長かったのだ。だとすれば初めの問いは、②「キリンの首は、なぜ長いのか。」となるべきであるが、実は、これもよろしくない。やはり「長いのは、一般的でない(変だ)。」という感情が入ってくるからである。キリンにしてみれば「どうして、人間の首は短くて変なのか。」と思っているにちがいない。結局、初めの問いは③「キリンの首は長い。それが、どうした?」となり、「そんなことは気にしなくてよい。それが、キリンだ。」が答えとなる。人は少なからず、他人と自分を比べて「私は、どうして○○○なのか。」という悩みに明け暮れている。そんな時は、久しぶりに動物園に足を運び、キリン舎の前で尋ねてみよう。5mの高さから「首が短いなんて気にしなくてもいいよ。それが人間なんだから。」と励ましてくれるに違いない。それでも元気が出ない場合は、ゾウ舎の前で……。動物園は、自分を見つめる場所だったと気づかさせられた。(2016年5月22日@nortan)