夕方、ビルの横に昇った大きな月を、スマホのカメラは小さな光にしか写しとれない。月は地球から約38万km離れたところにある。といっても直径は約3000km(地球の1/4でオーストラリア大陸ほど)もある。科学的には、楕円軌道で遠近点距離差が約5万kmの差ができ、実際見える大きさに14%ほどの違いが生じる。それでも、地球からは5円玉の穴におさまる大きさだそうだ。いや、ビルに並ぶともっと大きく見える!!私たちの眼が月に対して望遠機能を働かせているのだろうか。それとも、錯覚の科学で話題になった「見えないゴリラ」と同様に「見えすぎる月」も錯覚なのだろうか。「人間は進化の過程で暗闇に光る円いもの(獣たちの目)に気づく能力を発達させた。だから、月を必要として大きく認識している。」という説がある。地平線近くで大きく見えるが、高く昇るにつれ小さく見えるのは、獣が地面に身を潜めることに関係していそうだ。でも、獣なら光る点は2つだと疑問に思っていたら…「昔、月は2つあった。」という新説が出された。コンピュータのシェミレーションによって、原始の地球に月のもととなる隕石が衝突した後、飛び散ったかけらを集めた大小2つの月ができることが発見された。その後、小さい月が大きい月にゆっくりと衝突して現在の月となったという。月の裏側が表側と違う地形である理由もそれで説明できるようだ。地球上に生命が誕生する前の出来事だが、夜空を見上げて月が2つに見える時は、かすみ眼や乱視のせいではなく、遠い昔の空を夢見ているのかもしれない。さて、月やゴリラに限らず、人は自らの都合のいいように物ごとを見ていることは間違いなさそうだ。怖いものや魅力を感じるものに出会ったら、カメラで撮影して確かめてみよう。ゴリラのような上司が可愛いコアラだったり、月がスッポンだったりするかもしれない。(2015年12月28日@nortan)