5、無理数

算数好きを増やしたくて、「算数を学べば、いろんなことが楽になるよ。」と話すことがある。例えば、小数と分数を含むかけ算やわり算は、分数に統一すると計算が楽になる。でも、分数どうしのたし算やひき算は面倒である。それぞれの分母が最小公倍数になるよう通分しなければいけないから、かけ算やわり算の方が人気である。そう考えると、小数を含む10進数表記は便利であり、位をそろえればそのまま足したり引いたりできる。でも、かけ算やわり算となると小数点をいくつ動かすかなど、一気に難しくなる。どうやら何から何まで楽になることはないようだ。私たちの社会には多様な文化が存在し、互いの主張から対立を生んでいる。私たちの文化が分数ならかけ算で、小数ならたし算で簡単に溝を埋められそうだが、今も対立が完全になくならないことを考えると、私たちの文化には分数と小数以外の数も存在しているのだろう。πを教える時、3.14159265358979323846…と何十桁も暗記を競うことは大人気で、150桁まで暗唱できる者もあった。そんなπは教科書になくてはならない存在であり、分数では表せない無理数であり、e(ネイピア数)とならんで超越数である。そもそも、分数と小数は別々に発明された。1/3など完全に小数に直しきれない分数もあった。それでも私たちは、0.2+1/3 = 2/10+1/3 = 6/30+10/30 = 16/30 = 8/15と違いを乗り越えられるようになった。お互いにとって無理数たちとの関係も「ムリ!」と子どものように投げやるのではなく、いつか平和に解決できる文明を築けると信じたい。「πが発明されたからこそ、円く収まるのじゃ。対立を超越せよ。」と古代の数学者たちの声が聞こえてくるようだ。(2015年11月16日@nortan)

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