4、睡蓮

印象派の流れを創ったフランスの画家の展覧会が始まった。クロード・モネは、光と色彩の変化を追究した「光の画家」である。妻をモデルに「緑衣の女性」と対比して「ラ・ジャポネーズ」を発表したり、自ら手がけた「水の庭」に日本風の太鼓橋を渡したりするなど、日本の風物に魅せられていく。池の周囲には桜や竹、柳や藤も植え、睡蓮も日本から取り寄せたそうだ。睡蓮は、日本では未草(ヒツジグザ)とも呼ばれる。地下茎から水面に葉を伸ばし、夏~秋に白い花を水面に伸ばして咲かせる。ヒツジの刻(午後2時)ごろに花を咲かせるが、夜になると閉じて睡眠する。ゆえに、「水」蓮ではなく「睡」蓮である。3回ほど花を開いた後は、散るではなく、閉じたまま静かに沈んでいく。仏様の台座である蓮(ハス)との違いでもあり、日本の代名詞である桜の散り際とも対比できる。「桜、舞い散る。」「紅葉、舞い散る。」と圧倒的色彩を放つ風物ではなく、静かに白い花を水面に咲かせ、静かに消えていく睡蓮をモネは愛したのだろう。晩年は、それしか描かなかったと言われる睡蓮の連作は200作品にものぼる。モネの商売上手もあって、世界中の美術館や個人収集家のもとに存在する。モネは遺言として、「睡蓮」を展示する時は自分の他の作品と一緒に展示しないこと、作品と人の間に物を置かないことの約束を残した。先日より仏国では、夜も眠れぬほどの騒動である。日本の学生もホテルで外出禁止となり、美術館等の公共施設も閉鎖と聞く。モネの肖像画が「睡蓮連作を世界中から集めて、鑑賞してほしい。」と語りかけてくるようだ。人と人の間の垣根を取り払って。(2015年11月15日@nortan)

コメントを残す